海事広報・海事教育

わが国は、四面を海に囲まれ、海から大きな恩恵を受けているにも拘らず、国民の皆さんの間に、海や海事産業の重要性についての認識が、十分浸透していないという指摘があります。食料・エネルギー・生活用品の多くを海外に依存しているわが国にとって、それら輸入品の99.6%の輸送を担っている「海運」は、文字通り生命線でありますが、海運を中心とする海事産業は、「B to B産業」(注)で、日頃その実態が消費者の目に触れる機会が少なく、船も海に行かないと目の当たりにすることが出来ません。

しかし、今後さらに、海事産業に対する理解が薄れ、海事産業に就職する人が少なくなると、産業の維持や国の安全保障、引いては国民の生活にも支障が起きかねず、私ども海事・海洋に携わる者は、その責任として、国民の皆さんの前に、もっともっと海や海事産業の「見える化」を図り、わかりやすく、親しみを込めて、海事産業の重要性を理解して頂けるように努める必要があります。

注:B to B産業:消費者(=Customer)との間で直接取引が発生せず、企業(=Business)同士の取引によって成立する産業で、’Business to Business’、略して、’B to B’という。これに対して、消費者が直接その製品・サービスを購入する産業は「B to C産業」に当たる。

海事広報のためには、①主に小中学校における「海事教育」や②各海事団体・企業が実施する船の見学会のような「海事イベント」等を充実させることも必要ですが、この方面については近年進展があると言えます。これらと並行して、マスメディアやネットを通じて、マス(大衆)としての国民の皆さんに呼びかける「海事の一般広報」も重要です。

当懇話会としては、具体的には、以下のような手順・方法により、進めていきたいと考えています。
  1. 先ず、なぜ海事の重要性について国民の皆さんに伝える必要があるのか(海事産業の位置付け)、何がネックになっているのか、どうしたら伝わるのかについて、国民の皆さんの「消費者目線」で考え、私どもの間で十分共有すること。
  2. 「海の月間」(7月)や「海の日」を中心に、海事関連のテレビ番組を放映したり、「海の日」の意味についてのメッセージを入れたり、親しみやすいキャラクターから、海事の魅力について語りかけて頂けるよう、マスメディアに働きかけること。また、そのためには、各海事団体や企業などが実施する海事イベントに対して、マスメディアの取材が行われるような「仕組」を確立すること。
  3. ネットやSNSなど多くの人にアクセスが可能な媒体を利用して呼びかけること。
  4. 「海運」や「海事」単体でのアピールでは限度があるので、「海洋」や「水産」、「観光」等の業界や、関連学会、文化人等とも連携して、総合的な「海」の魅力・重要性を発信出来るよう対策を練り、実行すること。

是非、海洋立国懇話会の皆様、並びに当懇話会の活動に共感を頂ける皆様におかれましては、これらの活動に対してご理解とご協力を頂けますよう、よろしくお願いします。

海洋教育プログラム

2017年3月に改訂された小中学校の学習指導要領において、日本における海洋・海事の重要性の記載が充実し、学校教育の内容として従来よりも明確に位置づけられたことを受けて、国土交通省は、ホームページの中に「海洋教育プログラム」のページを設け、小中学校の教員向けに、無理なく授業の中に海洋・海事の重要性を取り入れられるよう、学習指導案や実際の海洋教育プログラムの取組例、海事関係団体の作成している教材などを紹介しています。

また、当該ページ内には、海事産業で働く方々へのインタビュー「SEA-GOTO 海のシゴトガイドブック」も掲載しています。中高生向けキャリア教育のほか、小学校の社会科等での活用を期待しています。

小中学校における海や船に関する教育(海事教育)について(国土交通省ホームページ)