​国民へ海洋立国の認識を徹底、「海の日」固定化などを決議

衆議院議員・衛藤征士郎先生

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海洋立国懇話会(宮原耕治会長)は5月14日午前11時から、東京都千代田区平河町の海運クラブで通常総会を開き、平成30年度の事業計画などを決定しました。この日の出席者は委任出席を含め171人。総会決議が採択され、国民の祝日「海の日」を7月20日に固定化して海洋立国日本の礎の日とすること、海の歴史・文化のナショナル・ミュージアムの整備などの実現を目指していくことが承認されました。

挨拶する宮原会長

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冒頭、国会衆院予算委員会開会中に来賓として出席した海事振興連盟の衛藤征士郎会長があいさつしました。   
この中で、衛藤会長は①海洋立国懇話会との連携②「海の日」固定化へ議員立法の動き-などに言及しました。

総会は宮原耕治会長が議長を務め始まりました。植村保雄事務局長から出席状況の報告があり、会員236人中、本人出席68人、委任103人で計171人出席、総会成立を確認しました。議題である平成29年度事業報告と収支決算、平成30年度事業計画と収支予算は、原案通り承認されました。

平成30年度の事業計画では、「海の日」固定化の推進を活動の基軸に据えて、課題に積極的に取り組むことにしています。情報発信・広報活動では「海の情報プラットホーム構想」推進を挙げ、専門性のある情報と地域に密着した情報の収集・発信に努めることにしています。

このほか役員改選で、宮原会長は再任、副会長などが一部新任されました。最後に宮原会長は、現在の会員236人のところ、500人への増加を目指すとともに、海洋立国の認識を国民に徹底させるため「海の日」固定化を強調し、海洋を巡る諸課題に取り組むと決意を述べました。総会後は内閣府の羽尾一郎・総合海洋政策推進事務局長を講師に招き、「第3期海洋基本計画」をテーマにセミナーが行われました。

第3期海洋基本計画について講演   講演者: 羽尾一郎・総合海洋政策推進事務局長

世界の模範となる海洋国家へ取り組み

5年ごとに見直しされる海洋基本計画は、閣議決定直前となっています。羽尾事務局長は、昨年12月18日に総合海洋政策本部参与会議の宮原座長から出された意見書に言及して説明しました。

この中で第3期海洋基本計画案の主なポイントとして、海洋基本法制定から10年間の総括と現状認識、海洋政策の理念や方向性など総論、370項目の施策に及ぶ各論、計画推進に必要な工程管理を挙げました。具体的には、海洋の安全保障、産業利用の促進、海洋再生可能エネルギー利用促進、海洋環境の維持・保全、漂流・漂着ごみ、海洋状況把握(MDA)、離島の保全・管理、北極政策、海洋人材確保育成、海洋開発技術者を育成するオーシャンイノベーションコンソーシアムなど多項目を概括的に説明しました。

新計画は、新たな海洋立国への挑戦に向け、着実に実施して、世界の模範となる海洋国家としてさらに飛躍を果たせるよう取り組むとしています。情報量が膨大なものとなることから、正式決定後の周知では国民の理解を得るため、専門用語に注釈やビジュアル的工夫など分りやすくしていきたいと述べました。

平成30年度総会決議

平成30年度海洋立国懇話会総会決議

わが国は海洋立国であるにもかかわらず国民の間にはその認識が欠如しているといわざるを得ない。海洋の安全保障環境をはじめ、わが国の海を巡る現下の状況を鑑みると、真の海洋立国に向けて地歩を固めることが喫緊の課題である。

わが国は海を通じて世界と繋がっている。そして海によって守られ、海を通じた物資の輸出入や水産物をはじめ海の恵み等によって国民経済が成り立ち、生活・文化の支えとなっている。これらは、国民がわが国の将来を考え議論するにあたっての共通の基礎となるべきである。しかしながら、海の産業に従事しようとする若者が年々減少するなど、海洋国家としての存立が著しく危惧される状況にある。われわれは下記の項目の重要性を内外に訴えその実現を強く求めていく。

  1. 国民の祝日「海の日」を7月20日に戻し、海の恩恵に感謝し、海の産業および海に働くこと、海を守ることの重要性を周知するとともに、平成8年7月20日に国連海洋法条約がわが国において発効した日、さらに平成19年7月20日には海洋基本法が施行され、わが国が新たな海洋立国を目指すことを宣言した日であることに鑑み、同日を海洋国家日本の礎の日とすること。
  2. わが国が海の産業なくしては成り立たないことは明白であり、海運・造船・水産・海洋開発・海洋レジャー産業等の振興および人材確保が不可欠である。国民が海や海の産業を身近に感じ、国民の間に海洋国家としての意識が敷衍するよう、海事・海洋教育の充実・強化を図り、海洋国家のバックボーンとなる海の歴史・文化を掘り起こし普及すること。また、全国に点在する海事博物館・水族館の有効活用を図り、その集大成というべき海の歴史・文化に関わるナショナル・ミュージアムを整備すること。
  3. わが国国民が海の環境を守り海に親しむためにも、海洋由来の食物、加工品、レジャー、レクリエーション、島の魅力等、海の魅力を多面的に内外に伝え、海に関わる観光振興や商品・サービス開発、地方創生等を通じてGDPの底上げに寄与すること。

以上
平成30年5月14日

平成29年度の事業報告について

事業報告
(平成29年5月9日~平成30年5月13日)

当懇話会は、平成29年5月10日総会以降、以下の通りの活動を行った。

組織関係

平成29年 5月10日  215 名    平成30年 4月30日  236 名

  1. 会員数推移
    平成29年 5月10日    215 名
    平成30年 4月30日   236 名
  2. 役員(平成29年度役員構成)
    【正・副会長】
      会長  宮原耕治(日本郵船相談役)
      副会長 釜 和明(IHI相談役)
      副会長 村山 滋(日本造船工業会会長)
      副会長 竹内俊郎(東京海洋大学学長)
      副会長 大山髙明(日本海事新聞社会長)
      副会長 前川弘幸(川崎汽船顧問)
      副会長 上野 孝(上野トランステック代表取締役会長兼社長)
    【顧問】
    衛藤征士郎(衆議院議員、海事振興連盟会長)
    髙木 義明(前衆議院議員、前海事振興連盟副会長・事務総長)
    西村 康稔(衆議院議員、海洋基本法戦略研究会座長)
    武見 敬三(参議院議員、海洋基本法戦略研究会代表世話人代行)
    笹川 陽平(日本財団会長)
    鈴木 邦雄(商船三井最高顧問)
    佃  和夫(三菱重工業相談役)
    山内 隆司(経団連海洋開発推進委員会委員長〈大成建設会長〉)
    渡邉 健二(日本通運会長)
    杉山 武彦(元一橋大学学長)
    岡本 行夫(外交評論家)
    白須 敏朗(大日本水産会長)
    髙島 正之(元横浜港埠頭顧問、TMCコンサルティング代表)
    戸田 邦司(日本海洋レジャー安全・振興協会会長)
  3. 賛助会員(順不同)
    日本郵船株式会社、株式会社商船三井、川崎汽船株式会社、株式会社IHI、
    株式会社日本海事新聞社、ジャパンマリンユナイテッド株式会社、
    ヤマハ発動機株式会社、三菱重工業株式会社、ナカシマプロペラ株式会社、
    川崎重工業株式会社、一般財団法人日本海事協会、鈴与株式会社。

活動報告

1)セミナー
第4回(平成29年5月10日、海運会館) 東京大学名誉教授 日本海事史学会会長 工学博士 安達裕之氏「海の歴史と文化~和船の船体構造の特徴について~」。81名参加。
第5回(平成29年7月6日、ルポール麹町) 総合海洋政策本部参与会議 参与 古庄幸一氏「海洋立国日本として今何を」。42名参加。
第6回(平成29年9月8日、砂防会館) 早稲田大学法学学術院教授 河野真理子氏「国連海洋法条約の紛争解決制度と南シナ海に関する紛争」。33名参加。
第7回(平成29年11月29日、海運クラブ) 元防衛大臣 森本敏氏「日本を取り巻く現下の安全保障環境―朝鮮半島情勢と中国の海洋進出を中心に―」。39名参加。
第8回(平成30年1月25日、ルポール麹町) 防衛省 統合幕僚長 河野克俊氏「北朝鮮情勢と日本の安全保障戦略」。42名参加。

2)研究会
第1回 海洋国家日本のあり方研究会(平成30年3月14日)
元海上自衛隊海将補 第一術科学学長 上田愛生氏「新海洋国家日本論-海洋国家日本のあり方について-」。25名参加。

3)海事振興連盟との「年齢制限のない若手勉強会」共同開催
平成29年9月11日開催の海事振興連盟主催の「年齢制限のない若手勉強会」より当懇話会との共同開催とし参加者拡大、講師探し等、諸便宜協力を行った。

第1回(第133回 「年齢制限のない若手勉強会」)
(平成29年9月11日)
東京海洋大学名誉教授・国土交通省運輸安全委員会委員 庄司邦昭氏「国内外の海事物語」。26名参加。

第2回(第134回「年齢制限のない若手勉強会」)
(平成29年10月2日)
国土交通省海事局総務課企画室長 小野雄介氏「海への誘い~国民の皆様に目を向けてもらうための取り組み~」。27名参加。

第3回(第135回「年齢制限のない若手勉強会」)
(平成29年10月24日)
韓国聖潔大学教授 韓鍾吉(ハンジョンギル)氏「朝鮮半島情勢と海運・物流およびクルーズへの影響」。33名参加。

第4回(第136回「年齢制限のない若手勉強会」)
(平成29年12月5日)
東京海洋大学教授 岩淵聡文氏「日本の海事系博物館」。26名参加。

第5回(第137回「年齢制限のない若手勉強会」)
(平成29年12月14日)
衆議院議員 中谷真一氏「我が国の安全保障について」。38名参加。

第6回(第138回「年齢制限のない若手勉強会」)
(平成30年1月17日)
早稲田大学非常勤講師 木原知己氏「海の歴史あれこれ~国民に海と民族の歴史を身近なものに~」。29名参加。

第7回(第139回「年齢制限のない若手勉強会」)
(平成30年2月8日)
広島大学教授 木村博一氏/広島大学付属三原小学校教師 村上忠君氏「海から観た社会科~海洋国家日本の社会科のあり方~」。68名参加。

第8回(第140回「年齢制限のない若手勉強会」)
(平成30年3月16日)
株式会社ジェネック 福山秀夫氏「九州の物流から見た一帯一路~中欧鉄道と北東アジアシームレス物流~」。23名参加。

4)海事地域ネットワークの構築(市長インタビュー)
日本海事新聞と共同で首長インタビューを行い、海事都市が抱える諸問題と展望の途を探った。
・上地横須賀市長インタビュー
(平成30年4月10日 於 横須賀市役所)

5)PRおよび提言活動
〇平成29年5月10日開催の「海の日固定化に関する決議」を同年9月臨時国会開催後、全国会議員に配布し理解を求めた。

海洋立国懇話会総会決議「海の日」を7月20日に

7月20日の「海の日」の祝日化は、2,300近い全国自治体の議会の決議を得るとともに、1,038万人もの署名を集めるなど、非常に幅広い国民運動の盛り上がりの結果、運動の開始から36年間の歳月をかけて平成7年3月実現にこぎ着けたものである。
「海の日」の意義と明治天皇
「海の日」は、明治9年に明治天皇が東北ご巡幸からお帰りの際、灯台巡視船「明治丸」に乗船され無事横浜にお帰りになられた日(海の記念日)に由来する。「明治丸」は小笠原諸島の我が国領有の基礎を固めた船でもあり、我が国の近代化を海から支えた。海の恩恵に感謝し、海洋国家である我が国の繁栄を願う「海の日」は民間の発意により初めて誕生した祝日であるとともに、四方を海に囲まれた我が国が世界に先駆けて祝日化した大変意義のある祝日である。
しかし、現在「海の日」は7月第3月曜日とされ、7月20日が「海の日」とされた本来の趣旨から次第にかけ離れ、この日に対する国民の意識が薄らいでいる。近年は、海の産業に従事する若年層がとみに減少しており、このままでは海洋国家日本の未来が危惧される状況にある。
上記のように「海の日」が歴史的事跡に由来することと併せ、祝日「海の日」が始まった平成8年7月20日に海の憲法と言われる国連海洋法条約が日本国内で発効したこと、更には平成19年7月20日に新たな海洋立国を標榜する海洋基本法が施行されたことにより、海洋国家日本の礎の日としての7月20日の意義は格段に強まっている
以上のことから、我が国が真の海洋国家として発展し、また海に働く人々が誇りをもって就業し、海の平和・安全・環境保全・海上交易の重要性を我が国から世界に訴えていくためにも、海の日を7月20日に固定すべきである。

以 上
平成29年5月10日

 〇日本海事新聞に当懇話会の活動内容を周知すべく、週1回ペースで海事振興連盟と共同で広告を掲載し、周知PRを行っている。
 〇会員向けに勉強会等諸行事の案内および海に関する各種情報に関しメール短信等にてPRを行った。
 〇海事振興連盟機関誌「うみ」の編集に第58号より参画し、提言活動の場を広げることとした。

6)総会に向けての準備に関するアンケート結果(231中64名回答)
 平成30年度決議及び事業計画に関し重要と思われる項目について全会員を対象にアンケートを実施した。
 ・海事教育の充実・強化           39名
 ・海事・海洋産業の振興と人材確保策の探求  39名
 ・海洋国家日本のあり方の探求        37名
 ・海の日の7月20日固定化の推進とアピール 32名
 ・海洋観光・海洋レジャーの振興策の探求   23名
 ・海の歴史と文化の国民への浸透       20名
 ・海の産業の広報               9名
 ・水産・漁港の分野の振興と人材確保策の探求  8名
 ・海事都市活性化対策の探求          7名

平成30年度の事業計画について

本年度も国民の祝日「海の日」7月20日固定化の推進を活動の基軸に据える。わが国を真の海洋立国とするため、海事・海洋産業の振興と人材確保策の探究、海事・海洋教育の充実強化、海洋国家日本のあり方の探究、海洋観光・レジャー振興策の探究、海の歴史と文化の国民への浸透等の課題を鋭意研究し実行に移す。具体的には下記事項に積極的に取り組む。

  1. 本懇話会の基盤確立
    本年度は、現会員の協力等により会員勧誘活動を拡充し、会員数500人の早期達成を目指す。海に関わる産業、人材、教育、文化、歴史等を次世代に引き継ぐため、学生等若い人たちの参加と拡大について鋭意検討を行う。
  2. 賛助会員の募集
    事業内容の充実等、必要な財源を確保するため、賛助会員(年間1口5万円)を広く募り、本懇話会運営の基盤を強化する。
  3. セミナー等の開催
    (1)セミナー
     原則ランチタイムに一流講師を招き会員対象の講演会・意見交換会を行う。一般参加も広く募集(参加費は別途検討)し会員拡大に寄与する。
    講演開始前に会員に本懇話会の足元の活動内容等を報告し、本懇話会の活動への理解を深めてもらう。

    (2)研究会
     当面の研究テーマである「海の歴史と文化」「海のまちネットワークづくり」「海洋国家日本のあり方」「海事・海洋産業の活性化」について、本懇話会メンバーからの研究発表または外務講師による講演および意見交換を行う。
    「海の歴史と文化」については、海洋立国日本の基礎となる日本の海洋文化や海事史関連だけではなく、広くアジアの海の中での日本の海の文化や海洋レジャーというトピックスにまで守備範囲を広げ、研究を継続していく。また国際的な会合等を通じ日本の海の歴史や文化についての情報を全世界に対して発信する。
    「海のまちネットワークづくり」については、平成29年度において、海洋都市横浜の実現を目指す横浜市と共同による研究会の開催、静岡発の海洋ベンチャー・新事業創出に取り組む静岡市へのアプローチに続き、平成30年度においては4月の横須賀市へのアプローチをはじめ、今後は佐世保市、五島市、呉市、今治市、舞鶴市等にも順次アプローチし、海のまち活性化のための研究成果を発信するシンポジウム等の開催を検討する。
    「海事・海洋産業の活性化」については、海洋立国の実態でもあるGDP(国内総生産)拡大の観点が重要であることに鑑み、平成30年度は海の産業振興に関わるテーマの研究会を増やす。
    「海洋国家日本のあり方」については、本懇話会活動の土台となるテーマであり、多面的に研究する。その際、海洋立国をノスタルジーと受け取られないよう留意する。政府の第3期海洋基本計画が「新たな海洋立国への挑戦」を今後の海洋政策の方向性に掲げていることにも留意し、海洋産業およびそれに従事する人材の重要性・将来性を若い世代にアピールしていく。

    (3)海事振興連盟主催の「年齢制限のない若手勉強会」との共催勉強会
     本懇話会の研究活動をさらに充実させる見地から、海事振興連盟との共催勉強会に積極的に関与しその拡充に努める。平成29年9月以降、8回共催しており、平成30年度においてはテーマを広げていくとともに、回数をさらに増やしていく。

  4. 情報発信・広報活動
     平成29年度のホームページ(HP)運用開始に続いて、海事・海洋に関わる情報のタイムリーな提供に努め、会員サービスを充実させる。また国民の祝日「海の日」の7月20日固定化には国民の理解が不可欠なことに鑑み、広報戦略の視点をもって効果的な情報発信の可能性について探求する。
     本懇話会事務局の運営に協力する日本海事新聞社との連携をさらに強化して、海のまちの首長インタビュー等を同社、本懇話会、海事振興連盟3者合同で行うほか、「海の情報プラットフォーム構想」を推進するため、専門性のある情報および地域に密着した情報の収集・発信に努める。
    海の情報プラットフォーム構想については、「小さく産んで大きく育てる」方針のもと本懇話会ホームページを一部修正した上で「うみクラブ日本(仮称)」のリンク付けを行い、umi-nippon.com(仮称)としての運営を検討する。これに関しては博物館・資料館・水族館などの外部ホームページをリンク付けし、地域海洋関連の歴史、文化、イベント等の情報を発信するとともに、広く情報や意見を求める。また、地方創生に資する「提案型情報プラットフォーム」を目指し、具体的な取り組みを紹介しアドバイス交換を行う等具体的な支援を行っていくこととする。さらに各大学およびシンクタンクと連携し、ネットワークづくりを目指すものとする。
  5. マインド調査
     当懇話会メンバーを対象に政治・経済・社会に関する各種マインド調査を行い必要に応じ対外発表・発信していく。